「事故ったら終わり」じゃない。実際に事故を経験した人の復活ストーリー

実際に事故を経験した人の復活ストーリーをご紹介します。

バックで車をぶつけた瞬間、全身の血の気が引いた。

ドンという鈍い音。
急いで降りて確認すると、駐車中の車のリアバンパーにしっかりと傷がついていた。

これはマズい――。
事故対応のマニュアルは頭に入っていたけど、手は震えていた。
「これでクビになるかもしれない」
「事故歴がついたらもう終わりだ」
そう思った。

実際に事故を起こしたドライバーのSさん（40代男性）が振り返るのは、転職からわずか3ヶ月目のことだった。

Sさんはもともと建設業からの転職。
運転には自信があったが、営業車での長時間運転、プレッシャー、気温の変化…
慣れない環境で集中力が切れていたのかもしれない。

「事故ったら信用を失う」
「職場に居づらくなる」
「保険の等級が落ちて、負担が大きくなる」

次々とネガティブな言葉が頭をよぎった。
報告の電話をかける手が、震えていたという。

営業所に戻って所長に報告したとき、返ってきたのはこうだった。

「まずは誰もケガがなくてよかった。それが一番。
事故は誰にでも起こる。でも、“どう反省して、どう立ち直るか”が大事なんだよ。」

Sさんは思わず涙が出そうになった。
怒られると思っていた。でも、その対応は想像と違っていた。

その後、会社側の指示に従い、修理・報告・保険手続きなどを冷静に対応。
初めての経験だったが、先輩ドライバーがつきっきりでサポートしてくれた。

さらに、会社は事故後のSさんにこんな“学びの時間”を与えた。
• 同じ場所での再トレーニング
• ヒヤリ・ハット事例の共有研修
• 安全確認の習慣化ワークショップ

▶ つまり、事故は「終わり」ではなく、「運転を見直す起点」になったのだ。

事故後3ヶ月、Sさんはある意味で“生まれ変わった”。
• 運転の癖を徹底的に見直し
• カーブ・交差点では声に出して確認
• 毎日、走行ログと車体チェックを欠かさず行うようになった

その成果は、はっきりと数字にも現れた。

事故後6ヶ月目には、売上が過去最高の月65万円を記録。
営業所内での「模範ドライバー」として安全運転指導に呼ばれることも増えた。

Sさんが口にしたのは、こうだった。

「あの事故がなかったら、たぶん今もどこかで“自分の運転は大丈夫”って油断してた。
怖かったけど、ちゃんと向き合えたのがよかったんだと思う。」

事故はもちろん、起こさないことが一番大事。
でも、それでも起きてしまったとき、**大切なのは“そこで止まらないこと”**だとSさんは言う。

もちろん、事故には責任が伴う。
反省も必要だし、再発防止への取り組みは欠かせない。

けれど、事故＝クビ、信用失墜、人生終了…ではない。

対応の仕方、反省の深さ、復帰後の姿勢によっては、
むしろ**「成長の転機」にすらなる**のだ。

✅この記事のまとめ：
• 事故は誰にでも起こる可能性がある
• 重要なのは、「起きた後に何を学び、どう立ち直るか」
• 落ち込むだけでなく、サポートを受けて復活できる環境もある
• 事故を機に、自分の運転・接客・心構えを見直すことができる
• 「もう終わり」と思った先に、新しいドライバー人生が始まることもある


事故は“終わり”じゃない。

本当に怖いのは、失敗することじゃなく、
失敗から“何も学ばないこと”なのかもしれません。

Sさんのように、
「失敗したからこそ、強くなれる」
そう思える人が、タクシーという仕事を通してまた一歩前に進んでいます。