前職の退職理由をうまく説明する“たった1つの考え方”

「なぜ辞めたの？」
この質問にうまく答えられず、面接で戸惑ってしまう人は少なくありません。特に40代・50代の転職者にとって、過去の退職理由は採用担当が最も気にするポイントの一つです。

不満を正直に言うと悪印象になるし、ごまかすと不自然になる──。そんなジレンマを抱えている方へ。実は、前職の退職理由を“前向きに”伝えるには、たったひとつの考え方を押さえるだけで十分です。

面接で退職理由を聞かれた際、ありがちな回答例としては以下のようなものがあります。

✗「人間関係がうまくいかなくて…」
✗「給料が低くて生活が厳しく…」
✗「長時間労働がつらくて…」

もちろん本音かもしれませんが、“前の会社の悪口”や“弱音”に聞こえてしまう表現はNGです。面接官は、こうしたネガティブな理由に対して、「うちでも同じ理由で辞めるのでは？」という不安を抱いてしまいます。

これこそが、退職理由をうまく説明する**“たった1つの考え方”**です。

つまり──
「辞めた理由」ではなく、「次に進もうとした理由」を語る。

言い換えれば、「何を避けたか」よりも「何を得ようとしたか」にフォーカスすること。

たとえば以下のように考えてみてください。


【ネガティブな表現】

✗「前職はノルマが厳しくて、数字に追われるのが苦痛でした」

↓

【前向きな言い換え】

◎「もっとお客様一人ひとりに向き合える環境で、丁寧な接客を追求したいと考えるようになりました」


【ネガティブな表現】

✗「長時間労働で心身ともに限界でした」

↓

【前向きな言い換え】

◎「年齢的にも、無理なく働き続けられる環境を求めて転職を決意しました」


【ネガティブな表現】

✗「職場の人間関係が悪くて…」

↓

【前向きな言い換え】

◎「協力し合える風土の中で、もっと前向きに働きたいと感じるようになりました」

退職理由をスマートに伝えるには、以下の3ステップで構成するとわかりやすくなります。


①「これまでの環境について一言ふれる」

（ネガティブにならない範囲で現状を説明）

例：「前職は売上第一の成果主義の職場で、毎月の数字を常に意識していました。」


②「転職を考えたきっかけ・気づき」

（価値観の変化や、働き方を見つめ直したきっかけ）

例：「ただ、年齢を重ねる中で、“数字だけでなく人との関わり”や“働きやすさ”も大切にしたいと感じるようになりました。」


③「次に進むための前向きな決意」

（これからの働き方・目指す姿を語る）

例：「今後は、お客様としっかり向き合いながら、自分らしく安定して働ける環境で力を発揮したいと考えています。」

タクシー業界への転職を検討している場合、以下のような前向きな志向で組み立てると効果的です。
• 「もっと成果が自分に返ってくる仕事がしたい」
→ 前職での評価制度に対するモヤモヤを言い換えた形。
• 「年齢に関係なく活躍できる仕事を探していた」
→ 年齢が壁になっていたことを前向きに転職動機へ転換。
• 「働く時間やペースを自分で調整できる仕事に魅力を感じた」
→ ワークライフバランスへの関心をきっかけに。
• 「人と接する仕事に戻りたいと思った」
→ 単純作業や孤立した職場からの転換をポジティブに表現。

退職理由で完璧な回答をする必要はありません。面接官が重視しているのは、「この人は自分の言葉で納得して転職しようとしているか」「次は前向きに取り組めそうか」という姿勢です。

言いにくい理由でも、自分の中で前向きな解釈に“翻訳”できていればOK。

前職を辞めたこと自体は、悪いことではありません。
大切なのは、「何から逃げたか」ではなく、「何に向かって進もうとしているか」。

退職理由を聞かれたときは、ぜひこの“たった1つの考え方”──
**「次にどう働きたいかを語る」**ことを意識してみてください。

その言葉には、あなたの誠実さと前向きさがきっとにじみ出ます。
そしてそれこそが、採用担当にとって「一緒に働きたい」と思える理由になるのです。