「お客さんとの出会いが、人生を変えてくれた」エピソード3選

タクシードライバーという仕事には、毎日新しい“出会い”があります。
見ず知らずの人を乗せ、数十分だけの空間を共有する──
一見、ただの移動に思えるかもしれませんが、ときにその出会いが「人生を変える一言」になることもあるのです。

今回は、タクシードライバーたちが実際に体験した、「お客さんとの出会いが人生の転機になったエピソード」を3つご紹介します。

（30代／元営業職）

転職したばかりの頃、接客にも自信がなく、ミスも多くて落ち込んでいた日。
深夜に乗せた年配のお客さまが、こう言ってくれた。

「君、すごく丁寧だね。安心して乗っていられたよ」
「君みたいな人が、もっとこの業界に必要だと思うよ」

その一言で、肩の力がすっと抜けた。
それまでは「営業で失敗したからタクシーしかなかった」という負い目があったが、“選んで良かった”と思えるようになった。

今では、新人研修のサポートも任されるようになり、「あの言葉が今の自分の原点」と語る。

（40代／元飲食店勤務）

朝7時、通院のためにタクシーを呼んだという高齢のお客様を乗せたときのこと。

体調が悪そうで、道中はほぼ無言だったが、目的地に着いたとき、ふとつぶやかれた。

「朝から優しくしてくれる人がいて、今日はちょっと前向きになれそうです。ありがとう」

このとき、「自分の仕事は、ただ人を運んでるんじゃない」と気づいた。

“誰かの一日のスタートを支えている”という実感が、誇りになった。
それからは、どんな早朝でも、「今日も誰かの役に立てる」と思えるようになったという。

（50代／元工場勤務）

長く工場勤務をしていたが、閉鎖を機にタクシー業界に転職。
話すのが得意ではなく、黙々と働く毎日に少し寂しさを感じていた。

そんなある日、酔ったサラリーマンのお客様を乗せた。

最初は静かだったが、帰り道にふとしたきっかけで会話が盛り上がり、別れ際にこう言われた。

「君みたいに感じのいい運転手に出会えて、今日はついてるよ」

たった一言だけど、「自分の存在が誰かにとって意味を持つんだ」と気づかされた。
それ以降、言葉に出さないお客さんにも“感じのいい空間”を提供しようと意識が変わったという。

タクシーという仕事には、マニュアルでは測れない“人と人のつながり”があります。
ときに、何気ないお客さまの一言が、
自分の価値を思い出させてくれたり、
明日も頑張ろうと思わせてくれたりする。

そうした“出会いの積み重ね”が、タクシードライバーという仕事の本当の魅力かもしれません。

稼ぐだけじゃない。
自由な時間だけでもない。
「人に感謝されながら働ける」──その実感こそが、続けたくなる理由になるのです。