不安だったけど、乗ってみたら楽しかった

「道を覚えられるか不安」「接客なんて自信がない」「体力的にきつそう」
タクシー業界に興味はあっても、一歩を踏み出せない理由は人それぞれです。
実際、未経験からの転職では**“乗ってみなければ分からない”ことばかり**。

しかし逆に言えば、実際に乗ってみて初めて「自分に合っていた」と気づく人も多いのがこの仕事の特徴です。
本記事では、入社前に不安を感じていた30代後半の転職者が、乗務を始めてから見つけた“意外な楽しさ”と“自分らしい働き方”に迫ります。

転職者の多くが共通して抱えるのは、「地理に詳しくない」「接客経験がない」「一人で大丈夫か」という3つの不安です。
特に東京や大阪などの都市部では、地名や裏道をすぐに覚えるのは無理だと思っていたという声が多数。
また、元工場勤務や配送業など、対人業務の少ない職種からの転職では、接客という言葉に身構えてしまう傾向もあります。

さらに、営業ノルマや売上プレッシャーのイメージから、「数字に追われるのでは？」と警戒する人も。
こうした“見えない部分”が、不安を膨らませる要因になっているのです。

実際に研修を終えて初めてハンドルを握った日。
緊張しながらも営業所を出たAさん（元設備工）は、想像とは全く異なる“静かな安心感”に驚いたと語ります。

タクシー車内は、基本的に1対1の世界。
お客様との会話も強制ではなく、必要な案内だけで成立します。
「黙っていてもいい」「無理に愛想を振りまかなくていい」
この接客スタイルは、過度なコミュニケーションを求められない仕事として、自分に合っていたと感じたそうです。

さらに、ナビの精度や配車アプリの普及によって、地理への不安も次第に薄れていきました。
「走りながら覚える」で十分対応できたことも、不安を払拭する要因に。

最初は「とにかく慣れることが先」と思っていたAさん。
しかし、数週間が経つ頃には、“ある種の面白さ”に気づき始めました。

たとえば、駅やホテルの前でお客様を待っている時間に、
「この場所、今日は人の流れが違うな」と街の空気を読む感覚が楽しくなってきたといいます。

また、常連のお客様から「またお願いします」と言われたときの達成感や、
渋滞を避けて裏道で早く到着できたときの自己満足も、仕事へのモチベーションに転化されていきました。

仕事に“ゲーム性”や“戦略性”を見出すことで、日々の乗務が単なる作業ではなくなっていったのです。

Aさんのように、「やってみなければ分からなかった」と話す未経験者は多くいます。
タクシー業界では、入社前にすべてのスキルを備えている必要はありません。
むしろ、最初に抱く不安があるからこそ、実際に乗ってみたときの発見や成長が実感できるのです。

不安とは、未知の世界への正常な反応。
大切なのは、その不安に飲み込まれず、一歩踏み出す“勇気”を持てるかどうかです。

タクシー乗務員という仕事は、“一見ハードルが高そう”に見えて、
実は「働きながら慣れていける」「意外と楽しい」と感じるポイントが多い仕事です。

不安があることは悪いことではありません。
しかし、“実際の仕事環境”や“自分との相性”は、想像だけでは決して見えてきません。

「不安だったけど、乗ってみたら楽しかった」
そう語る先輩たちの多くが、自分のペースで成長できる環境をこの業界に見出しています。

迷っているなら、一度だけでも話を聞きに行く価値はあります。
その一歩が、予想もしなかった“楽しさ”への扉になるかもしれません。