事故を起こしてから学んだ“本当のプロ意識”

～「運転技術」だけじゃない、タクシードライバーの本質～

あの日、たった一瞬の気の緩みが、
それまで積み重ねてきた信頼を揺るがすことになった――。

これは、あるタクシードライバーが小さな接触事故を起こしたことをきっかけに、「本当のプロ意識とは何か」を学んだ実体験に基づいたストーリーです。

誰にでも起こり得るミス。
でも、そのあとどう向き合うかで、ドライバーとしての「質」は変わる。
そんなリアルをお届けします。

あの日は雨上がりで、乗客を乗せた後に駅前でUターンをしようとしたときのこと。
右側から来たバイクとの距離感を見誤り、ハンドルを切った瞬間に接触。

幸い大きなケガはなかったものの、相手は転倒し、警察と救急車を呼ぶ事態に。
乗客にも迷惑をかけ、会社にも報告・謝罪・対応が必要だった。


✅ 思い返せば、“慣れ”が油断を生んでいた
• 「いつも通ってる道だから」
• 「雨も止んだし、もう大丈夫だろう」
• 「急いでいたから早く戻りたかった」

些細な気の緩み、ほんの一瞬の判断ミス。
それが、すべてを変えてしまった。

事故処理や会社でのヒアリングを経て、改めて考えた。
**「自分は本当に“プロ”だったのか？」**と。


▶ 変化①｜“予測”の精度を上げるようになった

事故の原因は、“目に見える危険”ではなく“想定すべきリスク”を無視したことだった。

→ 今では、交差点・横断歩道・バイク・歩行者…あらゆる要素に
「もしかしたら」「かもしれない」と考えて運転するクセがついた。


▶ 変化②｜「焦らない勇気」が持てるようになった

事故の直前、自分は“少し焦っていた”。
お客様を早く届けなきゃ。回転率を上げなきゃ。売上を上げたい――。

→ でも今は違う。「急がば回れ」が本当だったと知った。
スムーズで安全な運転が、結局は信頼と売上をつくる。


▶ 変化③｜「乗せる責任」を強く意識するようになった

車の中には、自分だけじゃない。
お客様の命を預かっている、家族にとってかけがえのない人を運んでいる。
その重みを忘れかけていたことに気づかされた。

→ 「安全第一」は口だけじゃなく、実行する姿勢が大事だと学んだ。

事故のあと、上司にこう言われた。

「プロっていうのは、ミスをしない人じゃない。
ミスから“学べる人”だよ。」

最初は自分が情けなくて悔しかったけれど、
その言葉のおかげで、下を向かずに前を向くことができた。

事故のあと、不安がなかったわけではない。
「また同じことをしてしまうんじゃないか」
「もうお客様に信用されないかも」

でも――
再び車を走らせる中で、少しずつ気づいた。
• 確実に慎重になった自分
• お客様の「ありがとう」の言葉が怖さをやわらげてくれた
• 無事故の日が続くことで、少しずつ“自信”を取り戻していった

今では、事故の経験があったからこそ、
**「本当の意味でプロとしての姿勢が持てた」**と思えるようになった。

✅この記事のまとめ：
• 事故の原因は「技術不足」よりも「慢心や油断」が多い
• 起こしてしまった後の向き合い方が、ドライバーとしての本質を問われる
• “かもしれない”運転・焦らない判断・責任感がプロ意識につながる
• ミスを恐れず、学びに変え、次の一歩を踏み出す勇気が大切
• 「安全に送り届ける」という基本を、忘れずに続けることが何より大切


タクシー運転手という仕事は、“人を運ぶ”だけでなく、
「安心」や「信頼」を運ぶ仕事でもある。

事故を経験したからこそ、その意味がはっきりと見えてきた。
それが、今の私の“プロ意識”です。